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不透明な時代におけるプロビデンスと不動産の未来

2020年 April 3日
エティエン・カデスティン   当初中国で、人間の呼吸器に深刻なダメージを与える感染力の強いウイルスが発生したことが報告された時、このウイルスが数週間のうちに世界中に広がり、パンデミックとなって世界経済を停滞させることになるとは誰も想像していませんでした。   わずか3週間で、ウォール街では価値の5分の1を失い、世界の金融市場は大混乱となりました。経済的損失を食い止めるために、世界中の政府が何兆ドルもの景気刺激策を発表しました。100億の人々の生活を長く維持するために、自然が我々に送っているメッセージに気づき、調和するための道を模索しなければなりません。   これまでの配慮の不足により、地球に多大な害を与えてきたことを今こそ認めるべきなのかもしれません。 国連環境計画のインガー・アンダーソン氏が先週説明したように、この最近のパンデミックは、地球を破壊するのをやめよという、自然からの厳しい声なき警鐘とも言えるのです。一流の科学者たちも、これらの悪性の病気が大流行するのはほとんどの場合、人間の行動が原因であるという意見で一致しています。   地球温暖化と自然破壊の原因となる消費の増加、農業の工業化、無計画な採掘、炭素集約型建設との間には、明確な相関関係が存在します。例えば、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)新型コロナ、鳥インフルエンザ、ジカ熱など、最新の病原体のほとんどは野生動物が発生源となっています。   昨年10月、私は光栄にもエステートガゼット賞において、栄えある「不動産の未来賞」を受賞しました。この賞は、ヨーロッパの不動産部門をより包括的で責任ある産業とするため、10年にわたるロビー活動やその他の努力よって創設されたものです。その年の秋、不動産業界はいわゆるプロップテックへの投資が活況を呈し、堅調さを示しました。最大の問題は、多くの人にとっていまだに問題となる「値ごろ感」でした。   現在、不動産投資の状況は急速に変化しています。この機会に一度立ち止まり、反省し、新たな問いかけをするべきではないでしょうか。この不確実な時代に、不動産の未来はどうなっていくのでしょうか。この混乱から、より堅牢で機敏な業界としてどのように立ち上がることができるでしょうか。 持続可能な未来に向けてどのように再編成、再構築していけるでしょうか?   不動産の未来はどうなるのか?   ショップ、パブ、レストラン、ジム、クラブなどの実店舗は当面の間休業となり、航空機や鉄道もキャンセルが相次ぎ、自宅での在宅ワークが可能な人たちは、ライフスタイルが大きく変わり、オフィスはほとんど空の状態です。在宅やソーシャルディスタンスは永遠に続くわけではありませんが、ヨーロッパが新型コロナの危機から回復した後の未来はどのようなものになるのでしょうか。   気候や危機に対する長期的レジリエンスは、競争力を高め、ビジネスを守る上での優先事項です。不動産投資家は、ネット・ゼロ・カーボンの実現を目指し続けるでしょう。 オフィスは従業員が集い、交流し、学ぶことのできる場所と変化し、座席数は大幅に減少します。在宅勤務が新しい標準となるでしょう。 その結果、今後のオフィス空間は従業員にとって、ウェルビーイング、生産性、文化、創造性、そして自然や持続可能性が集約した象徴的存在となります。 資源不足と建設コストが主な懸念事項となり、建築家はますます循環型社会の定義を計画に取り入れるようになるでしょう。 レジャーとホスピタリティ産業は緩やかに回復し、ホテルの安全対策に対する顧客の要望は強まるでしょう。 物流は、電子商取引の結果、ラストワンマイル配送と宅配ボックスの両方の需要が増加し、更なる需要に応えることになるでしょう。   この混乱からいかに強固で機敏な産業として生まれ変わるか。   現在の状況は、社会インフラへの投資が非常に長い間見過ごされてきたことを教えてくれています。ほとんどの政府や企業は、現在の危機に対処する準備ができていないのです。コロナ危機以降では、不動産投資の社会的影響を考慮し、雇用から、経済成長や福祉までを支援するために地域社会と関わる責任を負うことが重要になります。 […]

ヨーロッパの気候・環境規制の最新情報

2020年 April 2日
エミリー・ショウ著   政府は不動産投資家が不動産市場に参加するためのルールブックを作成しています。ここ数十年、ヨーロッパ各国政府が二酸化炭素排出量と環境汚染削減に向け意欲を高めているため、このルールブックは気候変動と環境への懸念を取り入れるように変更されています。ロンジェビティー・パートナーズは、お客様により良いサービスを提供するために、ヨーロッパ16ヶ国の気候・環境規制について、重要政策の動向とそれによる影響を特定するための継続的な調査・分析を行っています。   私たちの分析は、不動産投資家の活動に対する規制のリスクを理解することに重点を置いています。気候や環境に関する規制など、不動産投資家は高い頻度で大きく影響を受けます。建設部門は現在、欧州全体の炭素排出量の36%を占めており[1]、欧州の都市化レベルは2020年の75%から2050年には83.7%に上昇すると予測されているためです。[2] 建設分野の排出量削減を保証する政府の規制がなければ、ヨーロッパの都市化の進展に伴い、排出量は増加する可能性があります。各国政府が気候変動に関する目標を高く設定するにつれて、建築部門はより厳しい規制を遵守することが求められるでしょう。   この分析では、16カ国の環境と気候変動への規制を調査し、7つの環境カテゴリーに分類しています。これらのカテゴリーには、1)二酸化炭素排出量とエネルギー、2)水、3)廃棄物と材料、4)建築ラベルと基準、5)土地利用の変化と適応、6)企業報告要件、7)生物の多様性、が含まれます。次に、各規制が不動産投資家の活動に与える直接的・間接的な影響を判断することで、各規制のリスクを分析しました。最終段階として、規制の直接的な影響に応じ、7つの環境カテゴリーの総合的なリスク深刻度を国ごとに評価しました。   最新の分析結果   この半年間、ロンジェビティーの欧州規制研究では、2019年10月以降の規制変更に焦点を絞り、2つのカテゴリーの変更を確認しています。   1. 欧州連合は、ヨーロッパ・グリーンディールの一環として新しい気候規制を採用し、それに伴い多くの加盟国が法律を改正しています。 2. 各国は、地域の危機や課題に対応するため、政策を改正し、新しい法律を採択しています。    1) EUレベルの政策変更?   2019年12月よりEUは、2050年までにヨーロッパが初の気候ニュートラル大陸となるための計画である「欧州グリーンディール」について議論しています。この議論では、気候や環境に関する多くのEU規定の目標を高めることを目的としています。2020年3月にEUで合意されましたが、弊社の調査では多くの加盟国がすでに変更していることがわかりました。例えば、多くの国が気候変動に関する法律を改正し、目標設定の引き上げを含み、規制をより厳しくしています。ドイツは排出量目標を法制化した最初の国のひとつです。この新しい法律「Klimaschutzgesetz(2019年、気候保護法)」のもと、建築部門は毎年の削減目標とともに、2025年までに20%、2030年までに40%の排出量を削減しなければならないと定められました。もしこの部門が毎年の目標を達成できなかった場合、関連部門に目標達成のための緊急行動計画を実施する権限を与えています[3]。他の加盟国においても、EU排出権取引制度(EU ETS)の規制を改正したルクセンブルクやチェコ共和国などで、さまざまな規制の改正が行われています。またオランダでは欧州建築物性能指令(EPBD)の規則を更新し、新しいEU指令に対応した建築物認証法(BENG)を成立させました。   欧州グリーンディールは、EU加盟国の規制に関わる多くの政策変更をもたらし、今後も引き続き同様の状況になると予想されます。不動産業界にとってこういった流れは、より厳しい法規制がなされることを意味し、したがってこの政策変更に伴うリスクを軽減するために、不動産投資家は排出削減目標をパリ協定と整合させる必要があります。企業の透明性を高めるためのアライアンス(the Alliance for Corporate Transparency)が調査で強調したように、ヨーロッパ中の大企業の多くは、気候や環境要因に関する明確な重要業績評価指標(KPI)を持っていないので、気候リスクのモデル化に取り組めていません[4]。政策変更のリスクが高まる中、不動産投資家はより厳しい政策変更を先取りするために、目標KPIを策定し、資産全体のリスクモデリングを実施する必要があります。   私たちの分析では、EUレベルの政策変更によって、いずれ炭素排出量はエネルギーのカテゴリーから独立する可能性があることを強調しています。欧州グリーンディールでは、循環型経済とプラスチックの廃止も重視されました。EUは2021年から、非再利用プラスチックの使用禁止を可決しました。そのため、フランスやルクセンブルクなど多くの加盟国がこの非再生プラスチックを禁止し、オランダのように循環型経済を促す政策を実施しました。 […]

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