2020年 12月 7日
Mélanie Martinasso 著
消費習慣の変化、環境規制の強化、企業間の持続可能性への意欲的な取り組みにより、物流倉庫は新たな局面を迎えています。代替燃料や電気自動車の普及、輸送フローの最適化により、輸送に関わるCO2排出量が大幅に削減されたことで、物流倉庫の開発に直接的な影響を与えると予測されます。世界的なパンデミックにより、物流拠点が経済において果たす役割の重要性が浮き彫りになっています。実際、電子商取引の転換率は2019年から上昇し、3~13%の数値を維持しています。 このため基幹技術インフラの開発が必須となり、よりデジタル化されたサプライチェーンへの移行が早まり、近代的、効率的、さらに持続可能な倉庫施設の需要が高まっています。実際、オンラインショッピングでは、レンガとモルタルのサプライチェーンにおいて従来の3倍以上の倉庫や物流スペースが必要とされています。今後数週間にわたり、いくつかの記事で物流の未来を探っていきます。まず、建築物認証の役割と、BREEAM(環境不動産認証)やLEED(環境性能評価認証システム)を選択した場合の現実的な影響について見ていきます。次に、国連の持続可能な開発目標について取り上げ、なぜそれが今後の物流倉庫の最低基準となるのかを説明します。
ヨーロッパ全域における物流施設の需要が拡大
プロロジス(Prologis)の調査によると、ヨーロッパではコロナのアウトブレイク期間中、配送は大きな混乱もなく継続されています。物流業者の一部であるおよそ22%が、配送する商品の不足、もしくは安全上の理由による強制閉鎖のために活動レベルが低下したと報告していますが、これらはいずれも一過性のものと思われます。一方「変化なし」または「増加した」と回答した事業者も38%ありました。フォレスターの最新予測によると、2019年の11.8%に対し、2024年には西ヨーロッパの小売総売上高の17.8%をオンライン小売が占めるとされています。オンライン・ショッピングにおける10億ユーロの消費ごとに75,000 m2のスペースが必要という業界標準で仮定すると、今後5年間のオンラインの小売市場の成長に合わせ、西ヨーロッパではさらに1,670万m2の物流施設が必要となります。イギリスの不動産サービス会社Savillsは、ヨーロッパで2020年3月からロックダウンが始まって以来、産業用不動産の購入希望が約20億ポンド(約3,200億円)に到達したと記録しました。
この状況は今後も続き、関連部門は指数関数的に成長すると予測されています。物流投資は、この世界的な不安の中でさえも、非常に回復力があることが証明されています。こういった物流資産の必要量と国際的成長は、この分野の持続可能な成長を達成するために、他の資産クラスに対し、最高のESG基準を維持する必要性を示しています。
物流資産のESG基準 – すべての基準が同じではない
ESG基準をサポートする一つの方法は、物流資産と持続可能性活動を第三者基準に照らして評価し、長期目標を策定することです。新規の建築プロジェクトでは、BRE(Building Research Establishment)が管理するBREEAM認証とUSGBC(U.S. Green Building Council Inc.)が管理するLEED認証の2つが国際的な認証として認知されています。この2つの評価基準は、ほぼ同等の方法で持続可能な開発を管理するものです。しかし、そのアプローチには大きな違いがあります。例えば、LEEDの基準では、「室内空気環境の最低性能」の要件が非常に厳格です。この換気要件は、大規模な保管施設では満たすことが困難な場合が多く、倉庫の認証における問題点を浮き彫りにしています。物流ビルの倉庫部分を過度に換気するために過剰なエネルギーを消費することは、「少ないほうが良い」の推進を強く志向する弊社のエネルギー転換の取り組みと一致しません。一方、BREEAM規格では、どのレベルの認証を取得する場合でも、最低限必要な空気更新率は定められていません。またLEED規格では、すべてのレベルにおいて、水とエネルギーの計測と室内水消費量の削減を要求していますが、BREEAM規格では、これらの要求事項は認証レベルの「非常に良い」にのみ考慮されています。LEED認証の要求事項がより厳格に見える場合でも、BREEAM規格は必要なすべての分野をカバーします。最良の債権の帰属責任はプロジェクトに携わるコンサルタント会社に委ねられるため、評価対象の建物の種類に応じてより柔軟に対応することができるようになります。
このような認証には、BiodiverCity®やWELLラベルなど、他の補完的な制度が付随することがあります。BiodiverCity®ラベルは、生物多様性の推進に熱心な建物に合わせたソリューションを提供し、WELLラベルは健康と福祉に関する高い概念を促進します。良好で健康的な職場環境は、従業員のパフォーマンス、ウェルビーイング、また生産性向上につながります。建物の建設や改修の段階でウェルビーイングの原則を取り入れることは、建物の利用者に有益であることは間違いありません。BiodiverCity®ラベル(詳細はこちら)と共に、このようなプロセスは、より高い付加価値と資産の魅力の向上につながることが証明されています。
物流資産は様々な認証制度の利用やネット・ゼロ・カーボンの目標達成により、ESG基準をサポートすることができます。広大なスペースを持つ物流資産では、風力発電や太陽光発電による再生可能エネルギーを選択しやすく、その結果、倉庫の利回りは現在の4~5%から15%までに上昇可能です。さらにスマートメーター技術の導入により、エネルギー消費機器(フォークリフトなど)に直接電力を供給することで、資産のエネルギー消費を管理することができます。
ロンジェビティー・パートナーズは、これらの認証制度とネット・ゼロ・カーボン戦略について合わせて10年以上の経験があり、物流ポートフォリオが市場で最高のESG基準を満たすため、正しい決断ができるようにお客様へご提案をさせていただいております。
総括
現時点で明確なことは、建物のライフサイクル全体の分析において設計、施工、運用が重要な役割を担っているということです。カーボンニュートラルな建物の条件を満たすことは、今後より難しくなっていくでしょう。実際、自動化が進むにつれて、物流倉庫はより多くのエネルギーを消費するようになります。新しい倉庫はこの増加を見越し、エネルギー、廃棄物、水の消費量を発生から処分までのアプローチで監視し、報告する必要があります。このアプローチは、ネット・ゼロ・カーボン戦略として構築することができます。
ロンジェビティーでは、関連する持続可能な認証スキームを通じて、最高のグリーンビルディングが継続できるようお客様をサポートいたします。 投資家は、不動産の購入や転売のためにこれらの認証プロセス必要としています。しかし、地球規模でのエネルギー転換という目標も見失ってはいけません。そのため私たちのプロジェクトの焦点は、これら自身の良い習慣を最も高い目標と基準を包含するようにシフトし、最低限の基準を満たすものとは対照的になるようにしています。このような理由からロンジェビティーでは、お客様のポートフォリオの認証にとどまらず、本格的な長期ESG戦略におけるこれらのソリューションを最適な形で統合する方法を、お客様と一緒に模索いたします。
*nb:ネット・ゼロ・カーボン・フットプリントの保持、排出量の大幅な削減や持続的な排出量の相殺により、CO2排出量をゼロにする能力を持つことを意味します。