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危機の中で急成長:物流倉庫とESG戦略の必要性

2020年 December 7日
Mélanie Martinasso 著 消費習慣の変化、環境規制の強化、企業間の持続可能性への意欲的な取り組みにより、物流倉庫は新たな局面を迎えています。代替燃料や電気自動車の普及、輸送フローの最適化により、輸送に関わるCO2排出量が大幅に削減されたことで、物流倉庫の開発に直接的な影響を与えると予測されます。世界的なパンデミックにより、物流拠点が経済において果たす役割の重要性が浮き彫りになっています。実際、電子商取引の転換率は2019年から上昇し、3~13%の数値を維持しています。 このため基幹技術インフラの開発が必須となり、よりデジタル化されたサプライチェーンへの移行が早まり、近代的、効率的、さらに持続可能な倉庫施設の需要が高まっています。実際、オンラインショッピングでは、レンガとモルタルのサプライチェーンにおいて従来の3倍以上の倉庫や物流スペースが必要とされています。今後数週間にわたり、いくつかの記事で物流の未来を探っていきます。まず、建築物認証の役割と、BREEAM(環境不動産認証)やLEED(環境性能評価認証システム)を選択した場合の現実的な影響について見ていきます。次に、国連の持続可能な開発目標について取り上げ、なぜそれが今後の物流倉庫の最低基準となるのかを説明します。 ヨーロッパ全域における物流施設の需要が拡大   プロロジス(Prologis)の調査によると、ヨーロッパではコロナのアウトブレイク期間中、配送は大きな混乱もなく継続されています。物流業者の一部であるおよそ22%が、配送する商品の不足、もしくは安全上の理由による強制閉鎖のために活動レベルが低下したと報告していますが、これらはいずれも一過性のものと思われます。一方「変化なし」または「増加した」と回答した事業者も38%ありました。フォレスターの最新予測によると、2019年の11.8%に対し、2024年には西ヨーロッパの小売総売上高の17.8%をオンライン小売が占めるとされています。オンライン・ショッピングにおける10億ユーロの消費ごとに75,000 m2のスペースが必要という業界標準で仮定すると、今後5年間のオンラインの小売市場の成長に合わせ、西ヨーロッパではさらに1,670万m2の物流施設が必要となります。イギリスの不動産サービス会社Savillsは、ヨーロッパで2020年3月からロックダウンが始まって以来、産業用不動産の購入希望が約20億ポンド(約3,200億円)に到達したと記録しました。   この状況は今後も続き、関連部門は指数関数的に成長すると予測されています。物流投資は、この世界的な不安の中でさえも、非常に回復力があることが証明されています。こういった物流資産の必要量と国際的成長は、この分野の持続可能な成長を達成するために、他の資産クラスに対し、最高のESG基準を維持する必要性を示しています。   物流資産のESG基準 – すべての基準が同じではない   ESG基準をサポートする一つの方法は、物流資産と持続可能性活動を第三者基準に照らして評価し、長期目標を策定することです。新規の建築プロジェクトでは、BRE(Building Research Establishment)が管理するBREEAM認証とUSGBC(U.S. Green Building Council Inc.)が管理するLEED認証の2つが国際的な認証として認知されています。この2つの評価基準は、ほぼ同等の方法で持続可能な開発を管理するものです。しかし、そのアプローチには大きな違いがあります。例えば、LEEDの基準では、「室内空気環境の最低性能」の要件が非常に厳格です。この換気要件は、大規模な保管施設では満たすことが困難な場合が多く、倉庫の認証における問題点を浮き彫りにしています。物流ビルの倉庫部分を過度に換気するために過剰なエネルギーを消費することは、「少ないほうが良い」の推進を強く志向する弊社のエネルギー転換の取り組みと一致しません。一方、BREEAM規格では、どのレベルの認証を取得する場合でも、最低限必要な空気更新率は定められていません。またLEED規格では、すべてのレベルにおいて、水とエネルギーの計測と室内水消費量の削減を要求していますが、BREEAM規格では、これらの要求事項は認証レベルの「非常に良い」にのみ考慮されています。LEED認証の要求事項がより厳格に見える場合でも、BREEAM規格は必要なすべての分野をカバーします。最良の債権の帰属責任はプロジェクトに携わるコンサルタント会社に委ねられるため、評価対象の建物の種類に応じてより柔軟に対応することができるようになります。   このような認証には、BiodiverCity®やWELLラベルなど、他の補完的な制度が付随することがあります。BiodiverCity®ラベルは、生物多様性の推進に熱心な建物に合わせたソリューションを提供し、WELLラベルは健康と福祉に関する高い概念を促進します。良好で健康的な職場環境は、従業員のパフォーマンス、ウェルビーイング、また生産性向上につながります。建物の建設や改修の段階でウェルビーイングの原則を取り入れることは、建物の利用者に有益であることは間違いありません。BiodiverCity®ラベル(詳細はこちら)と共に、このようなプロセスは、より高い付加価値と資産の魅力の向上につながることが証明されています。   物流資産は様々な認証制度の利用やネット・ゼロ・カーボンの目標達成により、ESG基準をサポートすることができます。広大なスペースを持つ物流資産では、風力発電や太陽光発電による再生可能エネルギーを選択しやすく、その結果、倉庫の利回りは現在の4~5%から15%までに上昇可能です。さらにスマートメーター技術の導入により、エネルギー消費機器(フォークリフトなど)に直接電力を供給することで、資産のエネルギー消費を管理することができます。   ロンジェビティー・パートナーズは、これらの認証制度とネット・ゼロ・カーボン戦略について合わせて10年以上の経験があり、物流ポートフォリオが市場で最高のESG基準を満たすため、正しい決断ができるようにお客様へご提案をさせていただいております。   […]

グリーンエネルギータリフはどれだけグリーンなのか?グリーンエネルギープランとREGOを理解する

2020年 September 9日
by Kittithat Promthaveepong 今日の市場では多くの電力会社が、100%再生可能エネルギーによるグリーンエネルギー料金プランを販売していることをよく耳にします。これは炭素排出量を削減させるという点で、再生可能エネルギーを支援し、消費者や企業に二酸化炭素排出量を意識させる直接的な方法であると言えます。   しかし、再生可能エネルギーの断続的な性質と、多くの電力会社が上流発電に統合されていないという事実を考えると、100%再生可能エネルギーでバックアップされた電力とは実際にはどういうものなのでしょうか。   Ofgemの燃料構成開示義務とグリーン・タリフ   2005 年以降、イギリスのすべての電力供給会社は、通年で電力を供給する場合、燃料構成を消費者に開示することが義務付けられています。企業の再生可能エネルギー発電を検証するために、イギリスのガス・電力市場庁(Ofgem)は再生可能エネルギー原産地保証書(REGOs)を使用します。電力供給会社も、EU加盟国のREGOに相当する原産地保証書を使用することができます。これらはイギリスで一般に販売されているグリーン料金の骨格となっているのです。   再生可能エネルギー発電にREGOを発行し、電力とは別に販売する   Ofgemは、発電事業者が生産する再生可能エネルギー電力 1MWh ごとに REGO を発行しています。REGOは生産された電力単位とは無関係に、独自の市場で取引されます。つまり、REGOのすべての価格はREGOの需要と供給によって決定されるのです。   図1:電力販売量とREGO販売量の比較   REGOは主に店頭市場(OTC)の当事者間で取引されているため、価格の透明性はほとんどありません。また、Renewable ExchangeやE-Powerなどのオークションサイトからも入手できます。電力供給会社は発電事業者からREGO を購入し、100%再生可能エネルギーの販売や燃料構成の開示に利用することができます。   イギリスでは多くの電力会社がグリーン料金を設定し、再生可能エネルギーの発電所を自社で保有しているところもあります。多くは卸売市場(再生可能エネルギーと化石燃料の混合燃料)から電力を調達し、この卸売電力を補うためREGOを追加調達しています。再生可能エネルギーは断続的という性質のため、需給バランスを取るための卸売市場が非常に重要となります。   電力会社間の差別化要因は、電力卸売市場への依存度の高さです。例えばA社とB社という2つの会社が、どちらも100MWhのグリーン電力を販売しているものの、その電力供給の形態が異なった場合、わかりやすくするために両社とも電力供給は再生可能電力のみとします。(自家発電と直接購入)。 A社は100MWhの再生可能エネルギー電力を発電し、さらにREGOを購入しています。卸売市場を利用して断続性に対処し、負荷要件のバランスをとっています。 […]

CEOの見識 洞察 – 新領域に向けて一丸となって邁進する

2020年 September 9日
コロナウイルス感染症の大流行にもかかわらず、ロンジェビティー・パートナーズは不動産業界を変革するという使命を果たすべく成長の一途を遂げてきました。   私たちは顧客満足のためプロジェクトを潤滑に遂行しつつ、社員の健康とウェルビーイングに重点を置いてまいりました。経済活動を促進するグリーンジョブを創出し、若く才能にあふれた人材を採用しました。他社が削減や雇用の打ち切りを行う状況下でも、雇用を維持し、社員へ賞与の支給も実施し、また系列のグループ会社も含め、政府の給付金の申請をすることなく営業活動を行いました。   弊社では社員の安全と精神衛生は極めて重要であると考え、ウイルス対策を迅速に行いました。政府からガイドラインが発表される以前の3月上旬から、公共交通機関の利用を控えての出社や在宅勤務実施のため、フレックスタイム制を推奨しました。2015年の創業以来、社員全員が在宅で勤務が行えるよう設備環境を整えたので、3月16日以降でも全社的に在宅勤務となった際も大きな混乱なく移行することを可能としました。   ロンジェビティーでは2019年より、精神的、肉体的な健康維持のため、全従業員に1日1時間、スポーツをする時間を提供しました。さらに全従業員がリフレッシュできるようにメンタルヘルス休暇を設け、社内の様々なオンライン応援イベントを企画いたしました。毎週非公式で行うキャッチアップ、バーチャル飲み会、クイズ、スポーツチャレンジなどがあります。   私が優先したのは、チームが一丸となって潤滑にサービスが提供できる環境を整えることでした。   社会全体が混乱する中、社員全員が迅速に適応し、自分がすべきことを把握し、変化に対し前向きに対応することができました。弊社では2500万ポンド(およそ40億円)以上のGRESBアカウントを管理し、15カ国で300のBIU認証を行い、ESG戦略を多数提供しました。   今年は、ブルックフィールド・プロパティーズ(Brookfield Properties)、アクサ・インベストメント・マネージメント(Axa Investment Management)、JPモルガン(JP Morgan)、CBREグローバル・インベスターズ(CBRE Global Investors)、ランド・セキュリティーズ(Land Securities)、ユナイト・スチューデント(Unite Student)、ドイチェ・アセット・マネージメント(DWS)、インベスコ(Invesco)、ボーウィンベスト(Bouwinvest)、 CLSホールディングス(CLS Holdings)、セグロ(Segro)、ブラックロック(Blackrock)など、世界最大級の不動産会社から150万ポンド(およそ2億4千万円)の新規受注を獲得することが出来ました。業務内容は、ヨーロッパ全域のESGや気候リスク関連の法整備支援、認証、リスク管理戦略、再生可能エネルギーなど多岐にわたります。新規顧客のリストを拡大する一方で、インドと日本で新たに指示を受け、現地顧客のESG戦略を支援するなど、新たな地域でもサービスを拡大しています。   私はお客様の信頼と継続的なご支援に感謝し、それらにお応えすべく精進いたします。   ESG業界においてのロンジェビティーの強みは、多数の管轄地域における高水準で広範囲なサービスを提供できることですが、これはグローバル化した資本市場産業においても、顧客に同様に求められます。   お客様のご要望と地球のためのニーズにお応えするため、今後数ヶ月の間に4つの新オフィスを開設する予定です。アメリカに3つ(サンフランシスコ、オースティン、ニューヨーク)、ドイツのミュンヘンに1つです。現在の気候情勢を考えると、不動産業界の移行速度を加速し、排出曲線を抑制することが極めて重要です。これが世界規模かつシステマティックに行われてこそ、より高い影響力が発揮されます。弊社では資本金を調達することなく、会社の利益を使ってロンジェビティ   […]

改正EPBDはオランダの不動産部門セクターに対し、ネット・ゼロ・モビリティへの貢献について再考を要求した

2020年 April 9日
  先日、改訂版のエネルギー性能建築物令(EPBD)が発令されました。この発令は、建物のエネルギー効率を高める政策を実施するよう加盟国に求めるものです。オランダ政府はそれに従って行動し、2020年3月20日に新しい政策を開始しました。既存資産、および将来の資産における電気自動車用の充電インフラの提供に関する要件を定めています。これは不動産業界にとって重要な意味を持ちます。また別の規制では新たな価値創造の機会も提供しています。本稿では、改正EPBDの要件と、それがオーナー、デベロッパー、投資家、アセットマネージャーにもたらすリスクと機会について概要を説明します。さらにロンジェビティー・パートナーズが、今後いかにビジネスチャンスを捉え、不動産業界を支援していくかを説明いたします。   オランダにおける電気自動車(EV)の利用は増加傾向にあります。2019年の「新規販売EVSの乗客シェア」では、総販売台数の13.9%に達し、2018年の5.4%と比較するとその差は明白で、オランダは欧州のフロントランナーの一国となったのです。EVの新規登録のシェアが高いのはノルウェーで、実に41%にも達しています。この高いシェアは、同国の有利な税制と水力発電への依存度が高いため、化石燃料を使用する国と比べてEVへの切り替えが比較的手頃なことが理由として考えられます。   オランダの充電インフラの普及率はヨーロッパでも群を抜いており、2017年には、オランダのEV1台に対して約0.26基の充電ステーションが設置されました。 これは保有台上位3カ国であるノルウェー(0.05)、ドイツ(0.15)、イギリス(0.10)を凌ぐものです。 総合的にオランダは2050年までにゼロ・エミッションモビリティを実現するという公約を問題なく達成すると見込まれます。   オランダの国家気候協定(NCA)は、この公約を達成するために運輸・交通部門が行うべき概要を説明しています。2030年までに新規販売の自動車を、EVを中心としたゼロ・エミッション車にし、180万基の充電ステーションを整備します。これまでオランダ政府は、補助金制度や排出ガス・ゼロゾーン、グリーンディール電化輸送など、EVに有利なさまざまな政策を採用してきました。特に充電ステーションの数については、まだ改善の余地があります。オランダの充電インフラは密度が高い反面、2018年の利用可能な充電ステーションはわずか137,000基でした。これはNCAで規定されている180万台構想の内、わずか0.08%です。消費者はEVを購入する際の障壁として、高い価格と短い走行距離に次いで、充電ステーション数の不十分さを3番目に挙げており、問題視されています。そのため政府は、EV移行促進のため、大幅に充電ステーションを増やす必要があります。   改正EPBDは将来のEV利用の推進力となり、今日の不動産業界にも影響を与えている   改正EPBDにより、政府は新たな手段を手に入れたことになります。この命令は特に、建築物で利用可能となる充電ステーションの要件を規定しています。 許可申請の段階にあるプロジェクトにとっては、追加で遵守すべき要件となり、建築物に対する有効なエネルギーラベル要件と同様に、既存の不動産についてもこれに違反すると、罰金が科せられる可能性があります。以下の表は、ケースごとの指令の概要です。     この新しい規定は単に遵守を求めるだけでなく、ゼロ・エミッションモビリティへの移行において不動産業界が果たすべき重要な役割を示唆しています。モビリティ移行への問題を提起するだけでなく、都市構造における充電インフラの統合に関連する空間的な課題も提起しているのです。充電インフラが不十分な場合、資産の価値や市場価値が低下する可能性があります。今後の建築施設にとって、インターネットへの接続と同様に、充電ステーションやその他の電気自動車用設備は、テナント、従業員、顧客を得るために不可欠な設備となるでしょう。このような新たな需要に対応できない企業は、競争優位性を失う恐れがあります。   改正EPBDは住宅、商業施設、官公庁の不動産にとって価値創造の機会となる   資産の価値を見直すことに成功した人は、大きな価値を得ることができます。充電スタンドの普及は、テナントの誘致や維持に役立ち、物件の価値に付加価値をつけることができます。このことは、アメリカの住宅市場のトップ20を分析した結果、EVフレンドリーな地域の物件はプレミアム価格で販売されていることからもわかります。 一方小売業者にとっては、顧客が自動車に充電している間、店内で買い物をする機会が増えることで収益が増加します。また、企業や政府機関にとっては、持続可能なオペレーションを推進することで、保有車両の電力化の促進が可能となり、その購買力と保有車両の規模を考慮すると、充電ステーションは重要な収入源となります。   また今後は更に包括的で強固な半公共インフラが必要となります。現在、オランダの充電ステーションの73%は私有地に設置されており、残りの27%は半公共スペースに設置されています。世界的に見ると、90%以上が私有地に設置されています。この状況は、次世代のEV利用者の生活習慣によっても変化します。この世代は主に、都市部の密集した場所に住む中・低所得者層で、集合住宅に住んでいることが多く、駐車場を共同で利用し、家庭用充電器の選択肢も限られています。その結果ヨーロッパでは、充電の少なくとも60%が半公共の場で行われると推定されています。このような新しいEV所有者に公共充電を提供することは、不動産関係者に新たな価値創造の機会を提供することにもなります。特に賃貸物件のオーナーにとっては、貴重な設備となることでしょう。賃貸物件に住む電気自動車所有者は、充電のニーズさえあるものの、公共の充電ステーションに頼ることとなります。そういった意味で、公共のステーションは別の資産グルーとして分けて考えるべきかもしれません。構造上の制約がある都市部では、商業用駐車場は公共インフラのプラットフォームとして興味深い存在です。また、新興のe-モビリティネットワークに物件施設を接続することで、新たなパートナーシップや顧客層を開拓できる可能性も広がります。   一方、持続可能性に対する社会の目は厳しさを増し、企業はエネルギー消費とCO2排出の削減を迫られています。充電インフラの導入は、企業のサステナビリティ戦略における新たな手段となります。充電ステーションを提供することで、従業員の電気自動車利用を促進すれば、企業のスコープ3排出量にプラスの影響を与えます。さらに電気自動車用サービス機器を導入することで、施設のエネルギー使用量をより広範囲に統合管理することが可能になります。また太陽光発電システムなど、分散型エネルギー生成・貯蔵のためのソリューションと統合することで、企業のスコープ1排出量を削減することも可能です。これらの成果は、GRESBなどの不動産に関するグローバルサステナビリティのベンチマークに大きな価値を与えます。不動産業界は、EVと充電ステーションが生み出す価値を考慮したEV戦略を立てる必要があるのです。   ロンジェビティー・パートナーズは、企業がEVの価値をどこで、またどのように得ることができるかを理解するEV戦略を開発・ご提供しています。   […]

不透明な時代におけるプロビデンスと不動産の未来

2020年 April 3日
エティエン・カデスティン   当初中国で、人間の呼吸器に深刻なダメージを与える感染力の強いウイルスが発生したことが報告された時、このウイルスが数週間のうちに世界中に広がり、パンデミックとなって世界経済を停滞させることになるとは誰も想像していませんでした。   わずか3週間で、ウォール街では価値の5分の1を失い、世界の金融市場は大混乱となりました。経済的損失を食い止めるために、世界中の政府が何兆ドルもの景気刺激策を発表しました。100億の人々の生活を長く維持するために、自然が我々に送っているメッセージに気づき、調和するための道を模索しなければなりません。   これまでの配慮の不足により、地球に多大な害を与えてきたことを今こそ認めるべきなのかもしれません。 国連環境計画のインガー・アンダーソン氏が先週説明したように、この最近のパンデミックは、地球を破壊するのをやめよという、自然からの厳しい声なき警鐘とも言えるのです。一流の科学者たちも、これらの悪性の病気が大流行するのはほとんどの場合、人間の行動が原因であるという意見で一致しています。   地球温暖化と自然破壊の原因となる消費の増加、農業の工業化、無計画な採掘、炭素集約型建設との間には、明確な相関関係が存在します。例えば、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)新型コロナ、鳥インフルエンザ、ジカ熱など、最新の病原体のほとんどは野生動物が発生源となっています。   昨年10月、私は光栄にもエステートガゼット賞において、栄えある「不動産の未来賞」を受賞しました。この賞は、ヨーロッパの不動産部門をより包括的で責任ある産業とするため、10年にわたるロビー活動やその他の努力よって創設されたものです。その年の秋、不動産業界はいわゆるプロップテックへの投資が活況を呈し、堅調さを示しました。最大の問題は、多くの人にとっていまだに問題となる「値ごろ感」でした。   現在、不動産投資の状況は急速に変化しています。この機会に一度立ち止まり、反省し、新たな問いかけをするべきではないでしょうか。この不確実な時代に、不動産の未来はどうなっていくのでしょうか。この混乱から、より堅牢で機敏な業界としてどのように立ち上がることができるでしょうか。 持続可能な未来に向けてどのように再編成、再構築していけるでしょうか?   不動産の未来はどうなるのか?   ショップ、パブ、レストラン、ジム、クラブなどの実店舗は当面の間休業となり、航空機や鉄道もキャンセルが相次ぎ、自宅での在宅ワークが可能な人たちは、ライフスタイルが大きく変わり、オフィスはほとんど空の状態です。在宅やソーシャルディスタンスは永遠に続くわけではありませんが、ヨーロッパが新型コロナの危機から回復した後の未来はどのようなものになるのでしょうか。   気候や危機に対する長期的レジリエンスは、競争力を高め、ビジネスを守る上での優先事項です。不動産投資家は、ネット・ゼロ・カーボンの実現を目指し続けるでしょう。 オフィスは従業員が集い、交流し、学ぶことのできる場所と変化し、座席数は大幅に減少します。在宅勤務が新しい標準となるでしょう。 その結果、今後のオフィス空間は従業員にとって、ウェルビーイング、生産性、文化、創造性、そして自然や持続可能性が集約した象徴的存在となります。 資源不足と建設コストが主な懸念事項となり、建築家はますます循環型社会の定義を計画に取り入れるようになるでしょう。 レジャーとホスピタリティ産業は緩やかに回復し、ホテルの安全対策に対する顧客の要望は強まるでしょう。 物流は、電子商取引の結果、ラストワンマイル配送と宅配ボックスの両方の需要が増加し、更なる需要に応えることになるでしょう。   この混乱からいかに強固で機敏な産業として生まれ変わるか。   現在の状況は、社会インフラへの投資が非常に長い間見過ごされてきたことを教えてくれています。ほとんどの政府や企業は、現在の危機に対処する準備ができていないのです。コロナ危機以降では、不動産投資の社会的影響を考慮し、雇用から、経済成長や福祉までを支援するために地域社会と関わる責任を負うことが重要になります。 […]

ヨーロッパの気候・環境規制の最新情報

2020年 April 2日
エミリー・ショウ著   政府は不動産投資家が不動産市場に参加するためのルールブックを作成しています。ここ数十年、ヨーロッパ各国政府が二酸化炭素排出量と環境汚染削減に向け意欲を高めているため、このルールブックは気候変動と環境への懸念を取り入れるように変更されています。ロンジェビティー・パートナーズは、お客様により良いサービスを提供するために、ヨーロッパ16ヶ国の気候・環境規制について、重要政策の動向とそれによる影響を特定するための継続的な調査・分析を行っています。   私たちの分析は、不動産投資家の活動に対する規制のリスクを理解することに重点を置いています。気候や環境に関する規制など、不動産投資家は高い頻度で大きく影響を受けます。建設部門は現在、欧州全体の炭素排出量の36%を占めており[1]、欧州の都市化レベルは2020年の75%から2050年には83.7%に上昇すると予測されているためです。[2] 建設分野の排出量削減を保証する政府の規制がなければ、ヨーロッパの都市化の進展に伴い、排出量は増加する可能性があります。各国政府が気候変動に関する目標を高く設定するにつれて、建築部門はより厳しい規制を遵守することが求められるでしょう。   この分析では、16カ国の環境と気候変動への規制を調査し、7つの環境カテゴリーに分類しています。これらのカテゴリーには、1)二酸化炭素排出量とエネルギー、2)水、3)廃棄物と材料、4)建築ラベルと基準、5)土地利用の変化と適応、6)企業報告要件、7)生物の多様性、が含まれます。次に、各規制が不動産投資家の活動に与える直接的・間接的な影響を判断することで、各規制のリスクを分析しました。最終段階として、規制の直接的な影響に応じ、7つの環境カテゴリーの総合的なリスク深刻度を国ごとに評価しました。   最新の分析結果   この半年間、ロンジェビティーの欧州規制研究では、2019年10月以降の規制変更に焦点を絞り、2つのカテゴリーの変更を確認しています。   1. 欧州連合は、ヨーロッパ・グリーンディールの一環として新しい気候規制を採用し、それに伴い多くの加盟国が法律を改正しています。 2. 各国は、地域の危機や課題に対応するため、政策を改正し、新しい法律を採択しています。    1) EUレベルの政策変更?   2019年12月よりEUは、2050年までにヨーロッパが初の気候ニュートラル大陸となるための計画である「欧州グリーンディール」について議論しています。この議論では、気候や環境に関する多くのEU規定の目標を高めることを目的としています。2020年3月にEUで合意されましたが、弊社の調査では多くの加盟国がすでに変更していることがわかりました。例えば、多くの国が気候変動に関する法律を改正し、目標設定の引き上げを含み、規制をより厳しくしています。ドイツは排出量目標を法制化した最初の国のひとつです。この新しい法律「Klimaschutzgesetz(2019年、気候保護法)」のもと、建築部門は毎年の削減目標とともに、2025年までに20%、2030年までに40%の排出量を削減しなければならないと定められました。もしこの部門が毎年の目標を達成できなかった場合、関連部門に目標達成のための緊急行動計画を実施する権限を与えています[3]。他の加盟国においても、EU排出権取引制度(EU ETS)の規制を改正したルクセンブルクやチェコ共和国などで、さまざまな規制の改正が行われています。またオランダでは欧州建築物性能指令(EPBD)の規則を更新し、新しいEU指令に対応した建築物認証法(BENG)を成立させました。   欧州グリーンディールは、EU加盟国の規制に関わる多くの政策変更をもたらし、今後も引き続き同様の状況になると予想されます。不動産業界にとってこういった流れは、より厳しい法規制がなされることを意味し、したがってこの政策変更に伴うリスクを軽減するために、不動産投資家は排出削減目標をパリ協定と整合させる必要があります。企業の透明性を高めるためのアライアンス(the Alliance for Corporate Transparency)が調査で強調したように、ヨーロッパ中の大企業の多くは、気候や環境要因に関する明確な重要業績評価指標(KPI)を持っていないので、気候リスクのモデル化に取り組めていません[4]。政策変更のリスクが高まる中、不動産投資家はより厳しい政策変更を先取りするために、目標KPIを策定し、資産全体のリスクモデリングを実施する必要があります。   私たちの分析では、EUレベルの政策変更によって、いずれ炭素排出量はエネルギーのカテゴリーから独立する可能性があることを強調しています。欧州グリーンディールでは、循環型経済とプラスチックの廃止も重視されました。EUは2021年から、非再利用プラスチックの使用禁止を可決しました。そのため、フランスやルクセンブルクなど多くの加盟国がこの非再生プラスチックを禁止し、オランダのように循環型経済を促す政策を実施しました。 […]

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