テキサスプレゼンツ 温暖化する世界での凍結現象

タルーラ・ティボー著 – 2021年3月 – 2021年4月13日更新

 

スリとテキサス

 

先月テキサス州を襲ったウインターストーム「ユリ」以来、様々な情報が飛び交いました。異常気象の原因、科学を無視した結果、テキサス州の準備計画における判断ミス、そして責任のなすり合いという様々な現象を理解するために、たくさんのレポートやインタビュー等の証拠をふるいにかけて、今日ここにたどり着きました。

 

 

そもそも、あの嵐は何だったのだろうか。

 

温暖化が進む中、砂漠と酷暑で知られるこのテキサス州で、なぜ雪や氷が降り、氷点下の気温に見舞われたのでしょうか?このような現象は今後も続くのでしょうか?これらの異常気象に気候変動はどのように関わっているのでしょうか?これらの疑問は、気候学者が数十年にわたり、過去の傾向を理解し、将来のパターンをより正確に予測するために探求してきた内容でもあります。

 

気温が上がるとジェット気流は弱まり、揺れ動きます。このジェット気流が揺らぐと、地球上の他の地域に冷たい空気が流れ込むことがあります。極うずを乱す一因となっているのは、北極または極域増幅と呼ばれる現象です。ここ数十年の間に北極が世界平均の2倍以上に温暖化し、その挙動に深刻な影響を及ぼしていることを説明するものです。例えば、温室効果ガスの強まりといった放射収支の変化は、極付近の気温に地球全体の平均より大きな変化をもたらす傾向があります。極域で発生した寒気団は、数週間前に米国が経験したように、部分的に分離することがあります。この気象現象は、米国東部での大雪によく関連しており、気流が地球を横断することもあってヨーロッパの一部は厳しい寒さに見舞われることが多いのです。1か月前にその両方が起こりました。2021年初頭に渦が分裂し、1月中旬に再び分裂しました。1月の終わりまでに寒気の変位が起こり、冬らしい空気がヨーロッパとアメリカの大部分に流れ込みました。ウッドウェル気候研究センターと大気環境研究の科学者たちは、「これは1つではなく、3つの極渦の乱れと考えるべきだが、一部の科学者はそれをひとまとめにしている。」と認めています。それらを明確にするために彼らは、渦とその波の両方が自然である一方で、おそらく気候変動の要素が働いているとの見解を示しました。

 

研究者たちは、北極と世界中の気象パターンとの関係について研究を続けていますが、不安定な極うずが人為的な気候変動の直接的な影響を受けているという結論には、必ずしも達していません。しかし、最近のいくつかの気候傾向は明らかです。地球の平均気温は、19世紀後半から約2.12°F上昇し、現在も上昇を続けています。地球の気温は上昇していますが、必ずしも気候変動の結果が温暖化だけであることを意味しているとは限りません。自然界のシステムが完全に狂ってしまった世界では、さまざまな破滅的な結果が予想されるのです。寒気の塊がいつもの生息地である北極付近からアメリカ南部まで4,000マイルも移動した場合、それは地球が困難に陥っていることを示す明らかなサインとなります。気候変動がもたらす影響についてすべての科学者が同意しているわけではないですが、今後数年間はより多くの異常気象を目にするという点では一致しています。このため、気候変動の専門家の警告を聞き入れ、気候変動の根本原因に積極的に取り組むことが、すべての人々の最善の利益となります。近年、極うずが迷走することが多くなり、冬の嵐との直接的な因果関係はないかもしれませんが、確実に関連性は認められるのです。

 

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テキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)は、差し迫った冬の運命をいち早く察知していました。ERCOTはテキサス州の電力網であるテキサス相互接続を運営しており、テキサス州の電力負荷の約90%を占め、2500万人を超える顧客に電力を供給しています。ERCOTは米国初の独立系システムオペレーター(ISO)となり、北米全体で9つあるISOのうちの1つとなりました。これは、ERCOTがテキサスの電力の大部分を制御していることを意味し、独立した規制緩和された送電網から供給されていることを示しています。

 

ERCOTの価格設定は、需要と供給のみで決定される変動価格制であり、価格競争で形成されている市場です。企業は最も安価な商品を市場に投入し、高い利益を追求しようとします。規制緩和、安価な非再生可能エネルギー、既存のインフラ、伝統からの脱却をためらうことで、石炭、石油、天然ガスがテキサス州の電力供給源としての価格を維持しています。しかし、短期的な利益が長期的に持続するとは限らないのです。ですがローンスター州は信頼性の高い広大なインフラを構築せず、クリーンな再生可能エネルギーに十分な投資をしていません。さらに、自国の電力システムを近隣の州から切り離して運用することを選択すると、テキサス州は他州のエネルギーを、たとえそれが必要な場合でも、輸入することができなくなります。逆に、秋や春など気候が穏やかな時期に電力が余ると、発電したエネルギーは他州に輸出できず、結局は無駄になってしまうのです。

 

ヒューストンの報道によると、ERCOTは2月8日の時点で、2月11日から15日にかけて氷点下となることを発電事業者に警告していました。そのメッセージの記録によると電力会社は、「燃料供給を見直し、ピーク時の負荷に最適な燃料を保存する準備をし、予想される燃料制限をERCOTに通知する」ように警告されていました。

 

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異常気象の到来が明らかになった翌日、ERCOTの理事会が開かれました。2時間半の会議で予測される嵐について議論されたのはたったの1分以下でした。ビル・マグネス社長兼CEOは、バーチャルチーム会議の冒頭で、テキサスに向かう「かなり厳しい気温」について40秒足らず触れただけでした。しかしこの電話会議では、新しいリーダー的な役割の人選が行われました。議長にはサリー・タルバーグが、副議長にはピーター・クラムトンが選ばれました。タルバークは、「大きなカウボーイブーツを買おうと思っている」と冗談を言いながら、実際にはテキサス州ではなくミシガン州に住んでいます。クラムトン氏も同様に、州外のカリフォルニア州に在住しています。

 

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大惨事の1週間前、気象学者はテキサス州全域の気温が数日間連続して氷点下となる可能性が高く、最低気温も10℃になると視聴者に警告していました。

雪と氷が積もるのは珍しいことで、自動車事故が多発します。オースティンではノース・ステート・ハイウェイで26台の車が事故を起こしました。救急隊によると5人が入院することとなったそうです。フォートワースでは同じ日、さらに致命的な交通事故が発生しました。救急隊員のマット・ザバドスキーは「氷のために車道は危険で、第一応答者の何人かは現場で倒れていた。」と伝えています。ダウンタウン近くの州間高速道路35号線に渋滞していた、なんと130台ものセミトレーラーカー・トラックのコングロマリットで起こったことです。少なくとも65人が病院に運ばれ、6人が命を落としました。

 

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嵐は見事に到来し、ERCOTは一般市民に可能な限りの節電を呼びかけます。ERCOTのビル・マグネス氏はこう宣言しています。「テキサス州を襲った極寒のため、記録的な電力需要が発生しています。同時に、風力タービンの凍結や発電機に供給される天然ガスの制限により、通常より多い発電停止が発生しています。テキサス州民の皆様にはエネルギー使用量を減らすために、安全な方法を取るようお願いします。」 バレンタインデーの週末、テキサス州では254の郡すべてが冬の嵐ユリの影響を受けたが、これはちょうど126年ぶりのことでした。

 

215日~17           

月曜日からずっと雪が降り積もりました。外に出ると肌が焼けるような冷たい空気です。ニュースでは低体温症や凍傷について取り上げられ、テレビを見ている幸運な人たちに注意を促していました。その後、日中の明るいうちに溶けた氷も、気温が一桁に戻るとすぐに凍ってしまい、運転、歩行、自転車などの移動ではとても滑りやすい危険な状況となりました。2月16日までに、少なくとも450万人のテキサス州民が停電に見舞われます。また、配管の凍結や破裂により、何百万人もの人々が水を使えなくなりました。住居を持たない人々は、適切なシェルターや衣服、風雨からの休息がないため、特に大きな影響を受けました。この日までに少なくとも6人が死亡したことが確認されています。

 

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ERCOTが緊急オペレーションから復旧し、テキサス州の人々に電力を供給するまでに丸一週間を要しました。金曜日には降り積もった雪がようやく解け始め、住民はまるで羽化したばかりの蝶のように避難所から姿を現わしはじめます。19日にはサンアントニオで19℃の最低気温を記録したが、州内は平年並みの気温に戻りつつあります。

 

2月最終週

ERCOTの少なくとも6人の理事が2月23日に辞表を提出しました。共同声明では、州外の評議会リーダーへの懸念と、2月の吹雪の際の人々の 「痛みと苦しみ」を認識すると発表されました。「テキサス州は、洪水、干ばつ、異常気温、ハリケーンなどの悪天候に耐えられるよう、インフラ整備と緊急時対応への投資で全米をリードすることができる」と、書簡は述べています。

テキサス州議会は2月25日、停電に関しての公聴会を招待制で速やかに開きました。

 

3

3月1日までに40万人以上のテキサス州民が、水を煮沸し飲まなければなりませんでした。4日、ERCOTのCEOが危機管理を怠ったとして解雇されました。

3月15日に発表されたテキサス州保健局の予備データでは、2月の冬の嵐の直接的な結果として、州内で少なくとも57人が死亡していることが明らかにされました。極寒にさらされると低体温症になることはよく知られていますが、そのような状況に慣れていない州での極度の寒さは、自動車事故、一酸化炭素中毒、医療機器の故障、転倒、火災などを引き起こし、その多くは、人々がただ暖かく過ごそうとすることに起因しているのです。

 

主な内容

NBCの見出しには、「テキサス州は80年以上前にエネルギー危機の舞台を設定したままである」と書かれていました。米国本土のエネルギー供給網は3つの地域に分かれています。米国本土には、西部相互接続、東部相互接続、ERCOTの3つの地域に対応する分割系統のエネルギーグリッドがあります。テキサス州は全米でも有数のエネルギー生産・消費地ですが、自給自足に頼るように設計されているため、連邦政府の規制には縛られないし、保護されてもいません。批評家たちは、「監視がないために、冬の天候のためにエネルギー網をよりよく準備するはずの連邦政府の要求の下で州がその責任を回避することができた。」と述べています。法的な監視がないため、テキサス州のエネルギー供給会社は、厳しい冬の嵐に備えが足りず、そのまま逃げ切ったのです。

 

テキサスの電力網の機能を維持するためには、60ヘルツ前後の周波数を維持するための十分な電力を発電する必要があります。しかし、2021年に雪の試練が起こると気温が急降下し、雪と氷に覆われたテキサスでは、暖房を求める誰もがサーモスタットを回し、その結果、送電網からの需要が急増しました。同時に、テキサスの発電所は寒波のために停止を余儀なくされました。天然ガス、石炭、原子力、風力など、すべてのエネルギー源が何らかの形で故障したのです。設備は凍結し、パイプラインは破裂しました。1,450万人もの人々が水を失いました(現在も衛生的で清潔な水源に恵まれていない人々もいます)。

 

ERCOTの担当者は、送電網が需要を満たすのに十分な電力供給がない場合、送電網の周波数が強制的に60ヘルツを下回ると説明しています。その結果、テキサス州内で電力を移動させるのに必要な設備に物理的なダメージを与えることになります。そしてこのような状況が続くと、発電所の閉鎖を余儀なくされ、最終的には電力システムが完全に停止してしまいます。

 

59.4ヘルツを下回ってからちょうど4分23秒後、周波数が上昇し始め、顧客達はどんどん送電網から追い出されました。もし、この周波数があと4分37秒、最低周波数を下回ったままだったら、テキサス州は今も停電していた可能性があります。このような悲劇から立ち直るには、数週間はかかることが予想されています。ここローンスターでは、辛うじて回避できましたが。

 

この「一生に一度の嵐」に対するERCOTの対策は、40分以上の停電をさせないようにすることと、同時に緊迫した送電網の需要を減らすというものでした。しかし、この暴風雨で356台の発電機が停止し2011年にテキサス州が経験した暴風雨の2倍近くになっていました。明らかにERCOTは今後起こりうるより厳しい気象現象に対処するための戦略を修正していなかったのです。

 

このように、悲劇的な被害が頻発する温暖化した世界では、今後も異常気象の増加が起こることでしょう。気候が変化している原因の1つは、人間が化石燃料を燃やし、メタンや二酸化炭素といったものを大気中に放出することで、地球が温室効果ガスの閾値を越えているためなのです。私たちの持続不可能な行動によって間接的/直接的に引き起こされたテキサス州の停電は、化石燃料を燃やす発電所への天然ガスの供給を事実上停止させたのです。化石燃料が地球にとっていかに有害であるかを知ったときに直ちに化石燃料への依存をやめていれば、私たちは多くの世界的な問題を未然に防ぐことができたはずです。

 

今私たちは、クリーンで信頼性が高く気候変動に強いエネルギーを必要としています。今こそ、再生可能エネルギーへの全面的な移行が必要なのです。

 

余波の中での反応

 

ジョージア大学、大気研究プログラムのディレクターであるジェイムス・マーシャル・シェファード氏は、NPRに次のように語っています。「第一に、再生可能エネルギーや風力発電所に関する誤った情報を排除する必要があります。風力発電所はテキサスよりもずっと寒くて凍えるような場所でも稼働しているのですから」。

 

ホワイトハウスのヴェーダント・パテル報道官補は、「異常気象や気候変動に耐えられる柔軟で持続可能なインフラを構築することは、何百万もの高給な組合員の仕事を生み出し、クリーンエネルギー経済圏を作り、2050年までにネットゼロ・エミッションを達成するという大統領の目標に重要な役割を果たすだろう。」と述べています。

 

まとめ

 

オースティンに日の光と緑が戻ってきたにもかかわらず、友人、同僚、通行人から、この稀に見る激しい災害によって深刻な影響を受け、ホームレスになってしまった人たちの話も聞いています。また物的損害から立ち直るため、仕事のシフトを増やしている人たちをたくさん知っています。

 

1年以上「平穏」でなかったテキサスは、それは終わりが近いと感じ始めていました。しかし、冬のストーム「Uri」は私たちが自然に依存している存在なのであって、その逆ではないことをあらためて教えてくれました。私たちは地球環境について学び、尊重し、感謝し、そして守っていかなければなりません。

 

規制されていない電力市場や計画的に完全孤立した電気網、不適切な政治的リーダーシップ、耐久性のあるグリーンテクノロジーや再生可能エネルギーの不足などを避けるため、積極的に情報を学ぶ必要があります。テキサス州オースティンは、気候変動に強いグリーンインフラストラクチャーを整備し、一時的にバランスが崩れた世界の生態系に適応するための革新的な技術を常に推進することがまさに今、求められています。

 

会社の立場から言えば、気候変動で不安定な地球に対応するために、ロンジェビティ・パートナーズは特別な存在であると思います。私たちは既存の問題を解決し、新たな問題を発生させないようにするため自分たちの位置を確立させています。私どもの経験豊かなプロフェッショナル集団は、日々、既設建物の改修、新規建設プロジェクトにおける業界のベストプラクティスに関するアドバイス、クライアントの競争戦略の実行支援、不動産セクター全体の持続可能性の確保に取り組んでいます。建物のベンチマークから最適化、認証まで、電気自動車から太陽光発電の調査まで、法律による評価から企業のピアレビューまで、炭素計算からカーボンオフセットに至るまで、幅広いサービスを提供することで、ロンジェビティ・パートナーズは世界最大のサステナビリティ企業になろうとしています。テキサス州オースティンに米国事務所を開設するタイミングは、これ以上ないほど素晴らしいものです。

 

*413日更新

テキサス・トリビューン紙の速報によると、テキサス州上空に停滞した寒冷前線の影響で、テキサス州の送電網が制限された状態になると同時に、多数のエネルギー生産工場がメンテナンスのために停止しているため、ERCOTは本日(火曜日)午後、電力消費者に「節電」を呼びかけています。 テキサス州の歴史上、最も甚大な被害をもたらした災害の1つである2月の冬の嵐で引き起こされたような停電は予想していないものの、州の主要な電力網オペレーターは再び我々の信頼を揺るがすものになっています。

 

出典

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